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【プレスリリース】ワインブドウの成育測定はAIにお任せ: 静岡大学の生成AI拡張技術を用いた農業DX
国立大学法人静岡大学(所在地:静岡県静岡市、学長:日詰 一幸、以下、静岡大学)は、ヤマハ発動機株式会社(所在地:静岡県磐田市、取締役会長 兼 代表取締役社長 渡部 克明、以下、ヤマハ発動機)と連携し、十分かつ高品質な教師データの準備や作成に労力を要する農業分野等での機械学習タスクに対し、条件つき画像生成AIを用いた新たな生成データ拡張手法の研究開発に成功しました。
スマート農業の実現には、農作物の画像から特定の部位をラベル付けした大量の教師データが必要となります。
しかし、農作物の画像データは、同一品種であっても時刻や天候、生育状態、栽培環境によって様々な様相を示し、多様なドメイン的特徴を持っています。
また、熟練農家の勘や経験に基づく栽培手法や、農作物の複雑な形状と葉が生い茂るような成長過程も伴い、花や果実、節、熟度,病害の程度といったラベル付けが曖昧になりがちで、高品質かつ一貫した大量の教師データの作成を困難にしていました(図1)。
そこで、静岡大学の峰野研究室とヤマハ発動機では、条件つき画像生成AIを用いた新たな生成データ拡張手法を研究開発しました(図2)。
この手法では、無人地上車両 (Unmanned Ground Vehicle, UGV) 等で撮影される動画データから大量の画像データを抽出し、まずこの大量の画像データを用いて大域的な特徴を学習させます。
次に、少量の教師画像データを用意して局所的な特徴を追学習させることで、指定する条件に沿ったドメイン的特徴を持つ教師画像データを機械的に大量に自動生成できます(図3)。
一般に、生成画像の良し悪しを判断するのは難しいのですが、知覚類似指標を用いた自動選別を可能としています。
本技術を用いてワインブドウの成育測定における少量の夜間画像から昼間画像の生成データ拡張を行い、様々な物体検出モデルとKeypoint検出モデルで有効性を検証しました。
その結果、物体(BBox)検出タスクで28.7%、部位(Keypoint)検出タスクで13.7%の大幅な精度向上が見込まれることを確認しました。
これにより、十分かつ高品質な教師データの準備や作成に労力を要する農業分野において、教師画像データ準備の労力を抑えられます。
試算では、教師画像データ準備(2,400枚)に要する労働時間を600時間から1時間程へ大幅に削減することが可能になります。
また、異なる時刻や天候、圃場、成長段階などの変化への適用も可能で、作物の成長推定や収量予測など、AIを活用した農業DX発展のさらなる加速が期待できます。
当研究室では、農家の高齢化や減少に対応し、情報科学技術の側面から環境負荷の低減と生産性向上の両立を目指しています。
本研究成果は、Computers and Electronics in Agriculture 誌に掲載予定(先行Web公開)です。
【論文情報】(先行Web公開日:2024年12月28日,https://doi.org/10.1016/j.compag.2024.109849)
掲載誌: Computers and Electronics in Agriculture (Cite Score: 15.3, Impact Factor: 7.7, Q1) *
論文タイトル: D4: Text-guided diffusion model-based domain adaptive data augmentation for vineyard shoot detection
著者: 平原健太郎,中根睦仁,海老沢源,黒田剛士,岩城洋平,内海智仁,野村祐一郎,小池誠,峰野博史
* Computers and Electronics in Agricultureは、農学、園芸学、林学、水産養殖学、畜産学など、農業における問題解決のためのコンピュータ・ハードウェア、ソフトウェア、電子計測器、制御システムの開発と応用の国際的な研究成果をカバーしている学術雑誌です。
※本研究は、JST創発的研究支援事業(JPMJFR201B)の支援を受けて実施されました。
研究課題名: マルチモーダルフェノタイピングによる適応型情報協働栽培手法の確立
研究代表者: 峰野博史(静岡大学 学術院 情報学領域/グリーン科学技術研究所)