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ニュース 2024.05.14

【プレスリリース】フェアリー化合物の短段階合成手法の開発 -ファインバブル技術を活用したグリーンものづくり-

【プレスリリース】フェアリー化合物の短段階合成手法の開発 -ファインバブル技術を活用したグリーンものづくり-

グリーン分子創造技術研究コアの間瀬 暢之 教授 が率いる研究グループは、河岸 洋和 教授(研究当時、現:特別栄誉教授)らによって同大学で発見されたフェアリー化合物(1)の工業的生産を目指した戦略的グリーンものづくり合成法の開発に成功しました。

【研究のポイント】

・安価な原料を用いたフェアリー化合物の短段階合成を実現(通算収率47%)。

・独自開発してきたファインバブル(2)技術を活用したワンポット還元・環化反応の導入。

・不安定とされていた中間体の4-ジアゾ-4H-イミダゾール-5-カルボキサミド(DICA)を固体として安定的に単離。

・ヨウ素系触媒を使用した超効率的(反応時間13分)な分子内環化反応の新手法の構築。

【研究内容および研究成果】

静岡大学で発見されたフェアリー化合物は、植物の生物的および非生物的ストレス耐性を向上させ、農作物の増収に寄与することが明らかにされています。
フェアリー化合物の社会実用化は、持続可能な農業への大きな貢献を期待されています。
これまでのフェアリー化合物の合成方法は、多段階の工程と長時間の反応時間を必要とし、また青酸ガスのような高毒性物質の使用が避けられなかったため、実験室スケールでの研究に限られていました。

本研究では、短段階でかつ後処理を簡略化するために独自に開発したファインバブル技術を導入して、ワンポットで迅速な水素化と分子間環化によりイミダゾール骨格を形成しました。
また、これまで不安定とされてきた中間体DICAの固体単離が可能となり、結晶化による中間体精製が容易になりました。
さらに、DICAからフェアリー化合物への変換もヨウ素系試薬を触媒量で使用し、わずか13分で分子内環化が可能になりました。

以上のように、入手可能な原料からフェアリー化合物の一種である2-アザヒポキサンチン(AHX)の合成において、合成段階の削減、収率の大幅な向上(通算収率47%)、および合成時間の短縮を実現しました。
この新しい合成方法は、高毒性物質を使用しないため、フェアリー化合物の実用化につながることが期待されます。

【今後の展望および社会への還元】

本研究成果は、地球温暖化による食料問題の解決につながる持続可能な農業への貢献だけでなく、新たなバイオファインケミカルズの開発にも繋がる可能性を秘めています。
静岡大学は、これらの研究成果を基にした実用化と産業界への技術移転を積極的に行い、「グリーンものづくり」の推進に寄与することを目指しています。

静岡で見つかった化合物を、静岡で構築した合成手法で一緒に世界へ貢献しませんか?

なお、本研究成果は、2024年5月7日に、Royal Society of Chemistryの発行する国際雑誌「Organic & Biomolecular Chemistry」に掲載され、表紙を飾りました。
Fine bubble technology for the green synthesis of fairy chemicals - Organic & Biomolecular Chemistry (RSC Publishing)(論文、オープンアクセス)
Front cover - Organic & Biomolecular Chemistry (RSC Publishing)(表紙、フリーダウンロード)

▲ 独自技術による反応の理解からグリーンものづくりへ

【研究者コメント】

静岡大学グリーン科学技術研究所・教授・間瀬 暢之(ませ のぶゆき)

この研究を開始したのは2017年です。
静岡大学で発見されたフェアリー化合物が新しい植物ホルモンになる可能性があることを知り、工学部に所属している私は、グリーンものづくりに立脚した工業的生産について考えるようになりました。
少数精鋭で試行錯誤を繰り返し、独自の技術(ファインバブル有機合成)を組み入れることを絶対条件として、挑戦的、かつ努力を怠らない学生たちと日々奮闘してきました。
そして、2年前にインド工科大学ハイデラバード校(IITH)から静岡大学の博士課程に入学したArun君が本研究に取り組み、今回の成果をまとめることができました。

工業的に生産可能な手法にはまだ到達していませんが、静岡で見つかった化合物を、静岡で構築した合成手法で世界に貢献することを夢見ています。
天然物化学、有機化学、プロセス化学の総合知で世界へ一緒に貢献しませんか?

【論文情報】

・掲載誌名:Organic & Biomolecular Chemistry
・論文タイトル:Fine bubble technology for the green synthesis of fairy chemicals
・著者:Arun Kumar Manna, Mizuki Doi, Keiya Matsuo, Hiroto Sakurai, Ch.Subrahmanyam, Kohei Sato, Tetsuo Narumi and Nobuyuki Mase
・DOI:https://doi.org/10.1039/D4OB00237G

【用語説明】

(1) フェアリー化合物(Fairy Chemicals, FCs)
静岡大学の 河岸 洋和 教授 が発見した新しいタイプの化合物の総称であり、植物の生育に関与することが明らかになっています。

(2) ファインバブル(Fine Bubble, FB)
ファインバブルは、直径が100マイクロメートル(μm)以下の気泡を指します。
さらにサイズにより「マイクロバブル(1から100 μm)」と「ウルトラファインバブル(1 μm未満)」の二種類があります。

問い合わせ先:

(研究に関すること)
静岡大学グリーン科学技術研究所
教授・間瀬 暢之(ませ のぶゆき)
TEL : 053-478-1196
E-mail : mase.nobuyuki[at]shizuoka.ac.jp

※[at]を@に変更してご利用ください。

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